大判例

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福岡高等裁判所 昭和25年(ネ)214号 判決

控訴人等代理人は「原判決を取消す。控訴人等が被控訴人を相手方として提起する解雇無効確認請求事件の判決まで、被控訴人小倉管理部長が控訴人伊藤に対し昭和二十四年七月十四日、控訴人七ツ矢に対し同年同月十九日、それぞれ為した解雇通告の効力は、仮りにこれを停止する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

三、事  実

当事者双方の事実上の陳述及び証拠の提出援用認否は、控訴人等代理人において「仮りに定員法による解雇理由が競合しているとしても、控訴人七ツ矢は、その成績が解雇基準よりも上位に在り、且つ組合事務専従者であるから、その解雇は無効である。」と述べた外は、いずれも原判決書当該摘示と同一であるから、これをここに引用する。

四、理  由

当裁判所は原判決書に示された理由と同一理由によつて、控訴人等の本件仮処分申請を不適法と認めるから右摘示理由をここに引用する。

なお以下に免職理由の競合の点について補足するとともに、定員法による免職等に関し、当裁判所の見解を附記する。

控訴人等が免職されたということは、その理由の数の如何にかかわらず、免職という事実としては一つであつて、その理由の数だけ免職という事実が存するわけのものではないのである。理由はただ免職という一つあつて二つない事実を、正当附けようとするだけのものである。そして、本件の仮の地位を定める仮処分申請は、免職処分の効果として発生する免職という事実を否定して、免職という事実のない従前の地位の設定を仮りに求めるものであり、そのためには、免職に附された全理由について、それぞれその違法を攻撃しなければならないのであつて、その理由のうち一つの理由だけを攻撃するということは、およそこの種仮処分申請にとつて意味のないことといわなければならない。すなわち、一つの理由の攻撃が正当として認容されても、他の理由の正当性が打ち破られない限りは、免職処分の効果を除去して、従前の地位を囘復するに由がないのである。本件免職は、懲戒という理由と、定員法による人員整理という理由の二つに出たものであり、懲戒という理由に基く限り、本件免職について、仮処分に関する民事訴訟法の規定が適用されるものであるとしても、それだけで、仮の地位を定める本件仮処分申請が適法であるとはいえないのであつて、これが適法であるがためには、定員法による人員整理に基いても、仮処分に関する民事訴訟法の適用を受ける法律関係でなければならないことは、上来説示によつて明白であろう。でない限りは、本件の免職という一つあつて二つない事実について、民事訴訟法上の仮処分の規定の適用はないものといわなければならない。

定員法による人員整理という理由に基く国鉄職員の免職が、行政事件訴訟特例法第十条第七項の「行政庁の処分」に該当することは、原判決書の理由に示してあるとおりである。すなわち、国鉄職員が一般国家公務員と同様、定員法にいう職員に指定(行政機関職員定員法第一条、同法附則第七項)されたことからして、定員法による国鉄職員の整理に関する限り、国鉄は行政機関とみなされたと同一の結果をきたしたのである。これについて附言すれば、定員法が制定公布された昭和二十四年五月三十一日当時には、実は国鉄職員というのは現実には存在しておらず、同法附則第七項が人員整理の対象として規定した国鉄職員というのは、定員法と同時に施行(昭和二十四年三月三十一日法律第十五号、日本国有鉄道法の一部を改正する法律によつて国鉄法の施行期日が昭和二十四年六月一日に延期された。)されるべき国鉄法の附則第三項に基き、国鉄に国鉄職員として引きつがれる運輸省職員の一部に外ならなかつたのであつて、定員法による人員整理に関する限り、そこにいわゆる国鉄職員というのは、もともと運輸省職員なのであり、その整理を必要とする趣旨は、他の同省職員その他一般国家公務員についてと別段の差異があろうはずはないのであるから、定員法が国鉄職員の整理に関し、一般国家公務員のそれと同様の取扱いをしているのは、けだし当然といわなければならない。原判決書のこの点に関して示された理由を引用するゆえんである。

控訴人等は本件免職を無効とし、本案訴訟においてその確認を求めるものであるが、行政処分の無効確認訴訟とその取消訴訟とは、いずれも当該行政処分の違法を攻撃してその無効の確定を求める点において性質上の区別がないのであるから、右無効確認訴訟においても、原則として、行政事件訴訟特例法の規定が類推適用されるものと解するのが相当であり、従つて行政処分無効確認訴訟にあつても、右特例法第二条の取消訴訟におけると同様、仮処分に関する民事訴訟法の規定の適用を排除する同特例法第十条第七項の規定が、類推適用されるものといわなければならない。

本件仮処分申請は不適法として却下をまぬがれない。

よつて、これを却下した原判決は相当であるから、民事訴訟法第三百八十四条第八十九条第九十三条第九十五条を適用して、主文のように判決する。

(裁判官 小野謙次郎 桑原国朝 吉田信孝)

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